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百々と旅

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[本文より]
 彼女は灯台ではなく雨量観測塔だった。わたしは長いこと、彼女を灯台だと思っていた。母の写真で見ていただけだったので知らなかった。そうではないと知ったのは誰かのインスタグラムによってだった。
 少し前からフォローしている灯台マニアのアカウントで、日本中の灯台を撮ってまわっており、ぽつぽつ数日おきに灯台の写真が流れてくるのが、なんだかよかった。プロフィールに「She is beautiful.」とあり、わたしは灯台が女であることを知った。ほっそりしているもの、ずんぐりしているもの、白い女、縞模様の女、タイル貼りの女……。彼女たちはみんな孤独に見えた。わたしはいつも眠る前、知らない誰かの収集した女たちを眺める。夢の中で彼女たちにハグする。夜風に吹かれたタイルの肌は、きっとひんやりしている。(「百々と旅」より)


灯台に憧れる女の子の話ほか7編の短編集。
2018~2019年のアンソロ寄稿作などをまとめました。

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